職人が教えるシリーズ
牛革の次に日本ではポピュラーな革が豚革です。
生産から加工まで唯一すべての工程を国内で行うことができる豚革ですが、豚革について詳しく知らない方や何となく良い印象がない方も少なくないと思います。
しかし、皮革製品が好きな方やレザークラフターにとっては身近な存在で気になる素材の豚革。
- そもそも豚革とは
- 特徴
- 種類
などの基本的な豚革の知識や魅力をご紹介します。
この記事で少しでも豚革を知っていただき、商品選びや商品作りに活かしていただけたら幸いです。
豚革とは
革素材は食肉産業の副産物
豚革などの革素材は、基本的に食用として飼育されている家畜などから副産物として取れたものを使用しています。
豚皮は海外では食用として消費されることが多くあまり革になめされることはありませんが、
日本では沖縄以外では食用として消費されることがほとんどないため革素材として利用されています。
豚革は日本が海外に誇る高品質な輸出品
日本では上記の理由により豚原皮が比較的豊富なことと、見た目の特徴も相まって牛革などと比べて安価で取引されることが多いですが、
海外ではそもそも豚皮の流通量も少ないこともあり高級素材として利用している国もあります。
そのため日本は豚皮の原産国としても最大で、世界の豚皮の日本が占めるシェア率は7割程度を占めており、海外の有名ブランドにも使用されています。
また、豚革の主な原皮工場は東京都墨田区に集中していることも特徴で、その生産の多くを担っています。
特徴
豚革の主な特徴として
- 薄く強度が高い
- 柔らかく伸縮性が高い
- 摩擦に強く傷が付きにくい
- 自然なシボがある
- 吟面から床面に貫通する、3つにまとまった毛穴があり通気性が良い
といったものがあります。
上質な豚革はその吟面を活かして鞄や財布、小物などに使用されますが、上記の特徴を活かし内張り用として多く使われています。
内張り用として豚革はかなり適正があり、薄くて摩擦に強く、傷が目立ちにくく通気性が良いライニングを作ることができます。
種類
豚革(ピッグレザー)
日本で流通している豚革は、主に食用として飼育されているランドレース種、デュロック種、大ヨークシャー種などを掛け合わせた品種となります。
また、豚革は牛革と違い成長が早いため生育期間で革の種類を分けません。
そのため、基本的には生後6ヶ月程度で食用に出荷されたものの副産物を革素材として使用するため、大きさや厚みがおおよそ均一となっています。
色々な表面加工
ヌメ革
植物性のタンニンでなめし、表面に何も加工をしていない状態の豚革です。
豚革本来の表情が一番出ている状態で、シボや毛穴が目立ちますが一番経年変化を楽しめる仕上げです。
さらに、ここから各タンナー独自に加工したものが多く売られており、裏張りとしてではなくメインの素材としても使える魅力的な革が多く存在します。
アメ豚
裏張り用の革として知名度のある加工革で、豚ヌメ革を染色した後、グレージングという表面加工を施しアメ色に仕上げた革です。
グレージングとは、カゼインなどのタンパク質系仕上げ剤やワックスなどを塗布してから、ガラス玉や瑪瑙石のローラーで強く摩擦して光沢を出すものです。
ランドセルの裏張りとして使われているところをよく見ます。
スエード
スエードはクロムなめしで仕上げた革の床面をサンドペーパーなどで擦って起毛させる加工で、ピッグスエードの場合は毛穴が目立たなくなり上品な表情に仕上がります。
起毛面が手触りよく革も柔らかいため、高級鞄の裏地としてよく使われています。
また、上質なピッグスエードはそれ単体でも魅力があり、通常の革と違って裏が吟面のため、商品によっては両面使える仕上げのものがあったりと、それ単体で商品を作ることも多い革です。
番外編
イノシシ革
ジビエ肉として狩猟された際に出た革をハンターとお付き合いのある一部の国内タンナーや狩猟団体などが引き取り革を作っています。
天然のイノシシを狩猟した際にしか手に入らないことと、革の利用は現状各々のハンターの判断に任されていることもあり、流通量はかなり少なく通常購入しようと思っても手に入らない事が多いです。
豚の祖先ということもあり、革の表面に自然なシボや毛穴が3つあるといった豚革と同じ特徴を持っています。
ペッカリー
南米の熱帯雨林に生息しているイノシシに似た動物で、イノシシ革と同じく流通量が少なく、高級皮革として認知されています。
特徴は豚革と同じで、その柔らかさを活かして手袋用として利用されることが多い革です。
特にイギリスの有名グローブメーカー”デンツ“はペッカリーを使った手袋が有名で、つけ心地がとても良く、世界的な名品の1つとして認知されています。
豚革はメインでもサブでも使える汎用性の高い素材
豚革は全体的な製品の割合で見ると裏張りとしての需要が大きいとは思いますが、メインの素材としても十分使えるポテンシャルを持っている革です。
なので、豚革を売りにしている皮革製品メーカーも多数存在します。
他の皮革製品に比べて国内生産率が高いこともあり豚革自体の価格が比較的安いので、製品自体も手頃で購入しやすいのも良い点です。
また、レザークラフトを趣味や副業でしている方にも豚革を取り入れるのはオススメです。
上質でも安価で手に入り薄く軽量な豚革を利用することで、原価を抑えつつ軽量化も図れるため製品のクオリティをぐっと上げることができます。
(↓別記事で、高品質な豚革を個人で1枚から購入できるオンラインショップもご紹介しているので良ければご覧いただけると幸いです。)
ぜひこの記事を参考に、商品選びや製品づくりに豚革を取り入れてみて下さいね。