職人が紹介するシリーズ
- 質の良い革製品がほしいけどどんなブランドを選べばよいかわからない
- 大切な人にプレゼントしたいけれど革は詳しくないしよくわからない
など、財布やカバンなどを選ぶ時に困ったことはありませんか。
そのような方に、革製品業界に10年以上勤務歴のある僕が実際に使った体験談などを踏まえてお話する”職人が紹介するシリーズ”。
今回はイタリアンレザーなどを中心に商品展開をしている東京恵比寿のレザーブランド、sot(ソット)について。
ブランドヒストリーや使用している革のこと、展開アイテムなどを僕の商品レビューも踏まえて職人としての視点からご紹介していきたいと思います。
ブランドヒストリー
sotは2002年、東京恵比寿で創業した日本製のレザーブランドで、アパレルブランドのquadro(クオドロ)から派生したブランドです。
元々はセレクトショップであったsotですが、革鞄などの人気を受けてレザーブランドへと変わっていきました。
創業者の海川氏が公式HPにてブランドの起こりやsotに対する思いを詳しく語っています。
日本にはその当時から海外に通用する鞄ブランドが生まれていない。それを追い求めて、「sot」は今なお挑戦を続けています。
商品の特徴
こだわりのある革素材
sotで使用されている革には経年変化(エイジング)がよく現れるタンニンなめしの革素材が多く使われています。
参照:革の経年変化(エイジング)を知る。ナチュラルレザーにしかない魅力
その中でも代表的なものを紹介します。
Pueblo(プエブロ)
イタリアのバタラッシィ・カルロ社によるバケッタ製法を用いたレザーで、表面に真鍮ブラシによる細かい傷を付けたレザー。
光沢感のないマットな仕上がりで独特なアンティークな雰囲気が特徴的です。
一部革マニアには絶大な人気がある革で、経年変化が他レザーと比べて群を抜いて出てきます。
Minerva Box(ミネルバ・ボックス)
こちらもイタリアのバタラッシィ・カルロ社によるバケッタ製法を用いたレザーで、先程のプエブロと違い揉み加工を施しただけのシンプルな革です。
もみ加工により手触りが優しく革自体も柔らかく仕上がります。
革らしい表情を楽しみたい方には最適な革です。
ちなみに職人的な視点から言うと、表面加工が少ない分革生来の傷などが無い革を使用しなければ作れない革なので、より良い革を選別して作っているのがこの革です。
Buttero(ブッテーロ)
イタリアのワラピエ社による革です。
こちらは世界的にもかなり有名な革で、ヌメ革の王様とも称される革です。
こちらは上記の革たちと違い、全く加工をしていないスムースレザーという状態の革です。
発色の良さはピカイチで、美しい色展開が特徴です。
ジャパンレザー
sotでは上記イタリアンレザーの他に、栃木レザーや姫路レザーなど、日本製の革素材も多く使用しています。
日本の伝統工芸や文様を使用した裏地
sot製品の多くには甲州織や伝統文様を用いた製品が多く取り扱われています。
甲州織
織物の名産地として400年以上の歴史がある山梨で織られた生地。
高密度で均一に織られる生地は1日に数メートルしか織ることのできない貴重な生地で、光沢感や奥深い色合いが特徴です。
参照:高級感漂う甲州織。400年の歴史を持つ伝統工芸
亀甲文様
その名の通り亀の甲羅を模した模様で、現在では亀の甲羅のように固く身を守るという意味合いで長寿や健康を表す模様として使われています。
また、紙幣の象徴としても使われており、金運アップなど縁起がいいものとされています。
参照:日本の伝統文様、亀甲模様。歴史や意味など
付属の金具素材のこだわり
革素材の財布やバッグに相性の良い真鍮を多く使用しています。
真鍮
銅と亜鉛を混ぜた合金で、鈍い金色が特徴です。
革素材は使用していくと経年変化をしますが、それに合わせて真鍮もより光沢が落ち着き風合いが出てきます。
メッキ加工をされた金具の場合、使用するに連れメッキが剥がれ見た目があまり良くないですが、真鍮の場合そういったことを防げます。
商品ラインナップ
sot製品は使用しているレザー毎にシリーズを展開しています。
プエブロレザーシリーズ
上記したイタリアンレザーのプエブロを使用したシリーズ。
sotのシリーズの中では一番人気があり、展開も多いシリーズです。
その特徴は圧倒的な経年変化です。
数ある革素材の中でもバタラッシィ・カルロ社のプエブロはこの経年変化がもっとも激しい革だと個人的には思っています。
なので、経年変化を楽しみたい方にオススメのシリーズです。
また、基本的に含まれている油脂が多く、同時に油が抜けにくい特性のある革なので、よほど放置したりしなければ革の油分も抜けず、使っているだけで自身の手油も勝手に浸透してくれるので特別なオイルメンテナンスなどは必要ありません。
リンク:プエブロレザーシリーズ一覧
ミネルバ・ボックスレザーシリーズ
こちらも上記したイタリアンレザーのシリーズです。
プエブロと同じくバタラッシィ・カルロ社の革でなめしの製法も同じなので、基本的に経年変化を楽しめてメンテナンスフリーの革です。
見た目はプエブロと違いより革らしい革なので、誰でも持ちやすいシリーズです。
また揉み加工を施していることで、プエブロよりも柔らかい革質になっています。
また、色展開が豊富なので好きな色味からアイテムを探したい方はオススメです。
ブッテーロレザーシリーズ
同じくイタリアンレザーのブッテーロを使用したシリーズ。
スムースレザーで始めから光沢感があるので、かなり高級感のある印象を受けるシリーズです。
また、シックな色味のアイテムから、外と内で色が違うバイカラーのアイテムなど、ブッテーロレザーの光沢感や発色感を生かしたアイテム展開になっています。
リンク:ブッテーロレザーシリーズ一覧
ハンドウォッシュレザー
日本の有名革メーカー、栃木レザーを使用して作った製品に洗いをかけ、職人が一点一点指で形を成形したシリーズです。
その見た目は個性的で、ヴィンテージ感溢れるカジュアルなシリーズになっています。
sot製品では裏地を使用したアイテムが多い中で、このシリーズは俗に業界内で”ゾッキ“と言われる裏地などの生地を使わずに、革だけで仕上げたシリーズになっています。
番外編:マルチケース
タンニンなめしの牛革を硬化剤で固く仕上げてプレスで成形、圧着を施した革のケースです。
形を付けたあと職人がフタ部分をナイフでハンドカットしているので、ぴったり蓋が閉まる様ようになっています。
この製品は見た目以上に固く成形されているので、単純なケースとしての用途の他に灰皿としても使える強度になっています。
この手の商品は他社でも色々ありますが、ここまで固く仕上げてある製品はあまり見ないので珍しいです。
リンク:マルチケース一覧
商品レビュー
ここからは僕が過去使っていた製品を紹介します。
プエブロレザー長財布
経年変化を楽しみたくて購入しました。
機能面的には定番の長財布で、カード入れ14、札入れ2、小銭入れ1、フリーポケット3箇所と通常使う分には問題ない容量だと思います。
最初手に取った時に思ったことは、
- しっかりしている
- 厚みがある
- 和紙に似た手触り
といった印象でした。
そして使い初めて一番感じたことはやはり経年変化の激しさです。
使って3ヶ月頃から艶が出始め、半年経つ頃には色も変わり始めました。
僕自身財布は基本バッグなどに入れており、手に触れる機会は支払いの時くらいしかないのですが、それでこの変化スピードはかなり早い印象を受けました。
また、使っているのが”キャメル”という一番明るい茶色だったのでより経年変化が出やすかったというのもあります。
最終的には2年程度使用しましたが、自分好みに経年変化をしてくれたので結構愛着わきました。
※ここで実際に使用したものを載せる予定だったのですが現在財布を紛失中なのでもし見つかった場合は掲載します笑
経年変化に関してはこちらをご参照ください:プエブロレザーシリーズ(pueblo)。革職人をも魅了する理由とは
マルチケース
なんの用途もなくただただ可愛かったので買ったマルチケースです。
見た目の可愛さが一番のポイントですが、加工技術も高くかなり固いです。
これだけ固く仕上げられていても革で作られているため、経年変化もしてくれます。
↓こちらは大体2年程度使ったマルチケースのオレンジです。
小銭を入れたり薬を入れたりイヤホンを入れたりしていましたが、入れるものが無くなりそのうち何も入れずにただぶら下げていました笑
サイズがS、Lの2サイズ展開で選べるのですが、2サイズとも絶妙なサイズ感で悩ましいです。
僕が持っているのはLサイズですが、入れるものが決まっていなければぶら下げた時に可愛いサイズ感のSサイズをオススメします。
リンク:マルチケース(S)
↓ちなみにLサイズのサイズ感はこんな感じです。
総評
経年変化(エイジング)を楽しみたい方にオススメ!
sot製品はタンニンなめしのイタリアンレザーを多く使っているので、経年変化を楽しみたい方にオススメです。
基本的に革=経年変化という認識をしている方も多いと思うのですが、メインで使用されているプエブロレザーは多くの革を使用してきた僕からしてもかなり経年変化が激しい素材です。
また、プエブロをメインマテリアルとして使用しているブランドは多くはないのでその点が他社との大きい違いとなっています。
逆に経年変化が苦手な方は他社と比較してみて
sot最大の特徴の経年変化は大きなメリットでもありますが、逆にきれいな状態で何年も楽しみたい、といった方は他社と商品を比較してみることもオススメします。
もしくは色味を抑えて黒やネイビーといった色の場合は色が変わりすぎることはないので、そういった選び方をしてみてください。
長く使いたいものだからこそよく吟味して!
今回は経年変化が特徴のブランドを紹介しましたが、革の仕上げ次第では経年変化が出にくい革や、傷が目立ちにくい革なども多く存在します。
長く使いたいものだからこそよく吟味して、自分に合ったブランドを見つけられるといいですよね!
この記事がアイテム選びの参考になれば嬉しいです。
最後までご覧頂きありがとうございました!