ファッション

職人が教えるレザーの知識 ー牛革とは?ー

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職人が教えるシリーズ

この記事では

普段何気なく使っている牛革について、ルーツが気になったことはありませんか?

普段革製品を使っている方やこれから使う方、又はレザークラフターに向けて、

  • そもそも牛革とは
  • 特徴
  • 種類
  • 部位

などを職人目線で細かく掘り下げて解説します。
一口に牛革と言っても牛の産地や年齢、部位などでかなりの種類があるので、これを知ることで今後革製品を使う時、又は革製品を選ぶ時の意識が変わると思います。

また、いろいろな知識を学んだとしても店員さんに突っ込みすぎて逆に困らせないように注意してくださいね笑

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牛革とは

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牛革はその名の通り牛の皮をなめした革素材です。

特に日本の革製品の中では最もポピュラーな革で、革の種類も多く存在しています。

俗に日本で本革やレザーというと牛革のことを指します。

革素材は食肉産業の副産物

牛革などの革素材は、基本的に食用として飼育されている家畜などから副産物として取れたものを使用しています。

革製品に牛革が使用されることが多い理由は、牛は世界中で多く飼育されていて安定した供給があるためです。

皮と革、革になる前段階の”原皮”とその産地

”かわ”には2種類の漢字がありますよね。

です。

”皮”は屠殺された牛から採れる皮のことで、”革”は採れた皮をなめして素材に仕上げた状態のことを指しています。

皮は”原皮”とも呼び、北米、オーストラリア、ヨーロッパ、東南アジアなどからタンナー(なめし業者)が仕入れて革に加工しています。

原皮の8割程度は海外産のものを輸入していますが、国産の原皮もあり地生(じなま)と呼ばれています。

参照:松阪牛を使った革小物「さとり」

フランス、イタリア、ドイツなど様々な国でなめされる牛革

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牛が世界的に飼育されて食されているように、タンナーも世界各地に存在します。

特にヨーロッパ方面は、食肉産業とともに革産業の歴史も古くからあるためなめしの技術が高く、高級メゾンなどで使用されているタンナーも多く存在します。

日本でよく言われる高級レザーとはフランスイタリアドイツなどでなめされたレザーを指していることが多いです。

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特徴

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牛革は一般的に使われる他の革素材、例えば馬、豚、羊、ヤギなどと比べると

  • 1頭から取れる革の面積が大きい
  • 皮下繊維の組織が比較的均一で丈夫
  • 厚みをもたせてなめすことができる
  • 生育年数による革の種類が豊富

といった特徴があり、とても汎用性が高い革素材です。

例えば、ベルトやワークブーツなどの高強度を求められる製品から、財布や小銭入れなどの繊細な小物まで、革の厚さを調整することで使い分けすることができます。

バイカー用のベルトなど長年使う製品には厚み5mmの1枚革を使うことも珍しくありませんし、財布などの小物のパーツは1mm以下に漉いて使うこともあります。

それほど汎用性が高く流通量の多い牛革なので、大手メーカーから作家さんまで幅広い層の職人に愛され使われています。

種類

牛革は牛の生育年数や性別によって革質が分けられており、どういった製品を作るかによって使い分けがされます。

ハラコ

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牛の胎児から採られた革。

漢字では意味合い通り”腹子”と書き、英語ではアーボンカーフと呼ばれています。

本来は出産前に亡くなった牛のお腹にいた腹子や死産した子牛から採られる革ですが、その性質上極端に採取量が少ないため近年では生後間もない子牛の毛皮もハラコとして取引されています。

特徴
  • 非常に柔らかく、毛を残した状態でなめされた革
  • 流通量が少なく高級
  • 供給量が少ないためポニー(子馬)など牛以外の革をハラコとして販売している場合も多い

カーフスキン

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オス、メスともに、生後6ヶ月位までの子牛の革。

牛革の中でも希少で高級な革になります。

特徴
  • しなやかで柔らかい
  • 吟面が薄くきめ細やかでデリケート
  • 生育期間が短いため傷が少ない
  • 1頭から採れる面積が少なく流通量も少ない
  • カーフスキンの中でも生後3ヶ月以内に採れた革はベビーカーフと呼ばれ、更に希少な革として取引されている

キップスキン

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オス、メスともに、生後6ヶ月〜2年以内の中牛の革。

カーフスキンに次いで高級な素材となり、子牛と成牛の中間の特徴を持つ革になります。

特徴
  • カーフスキンに次いでしなやかで柔らかい吟面
  • カーフスキンよりも密度が高く丈夫
  • 成牛よりも吟面がなめらかでデリケート
  • 生後1年半以上のものはオーバーキップと呼び、成牛に近い性質を持っている

カウハイド

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生後2年程度の出産を経験したメスの成牛の革。

特徴
  • カーフ、キップスキンと比べ固さと厚みがあり丈夫
  • オスの成牛と比べるとやや柔らかい
  • 出産を経験しているためお腹周りの繊維密度が粗い
  • 出産経験のない成牛雌牛の革はカルビンと呼ばれ、カウハイドより上質な革だが流通量は少ない

ステアハイド

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生後3〜6ヶ月の間に去勢された、生後2年程度のオスの成牛の革。

市場に出回っている革の多くはこのステアハイドであることが多いです。

特徴
  • カーフ、キップ、カウハイドと比べ固さと厚みがあり丈夫
  • カウハイドより全体的に革の繊維や厚さが均一なため使い勝手が良い
  • 去勢されたオスは穏やかな性格になるため通常の雄牛と比べ生育時に付く傷が少なくなる
  • 去勢されていない雄牛と比べてきめが細かく柔らかい

ブルハイド

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生後3年以上経過した去勢されていない繁殖用のオス牛の革。

特徴
  • 牛革の中で最も固く、厚みもあり丈夫
  • きめが粗く繊維も粗い
  • 去勢されていないため気性が荒く、生育時に付く傷が多いので用途が限られる

部位

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(※注意:↑の図はお肉の部位です笑)

牛革はその大きさゆえに、体の部位ごとに様々な特徴があります。

革製品を作る上で、上記の生育年数と部位を選んでの使い分けが製品のクオリティの差に現れてきます。

ヘッド

頭頂部から鼻にかけての革。

下記の特徴から市場にはあまり出回らず、ほぼ製品には使われません。

特徴
  • 繊維が粗く薄い
  • 他の部位と比べて強度が弱い
  • 面積が小さい

ネック

首の革。

全部位の中で一番厚みのある部分ですが、下記の特徴から流通量が少なくあまり使われていません。

特徴
  • かなり厚みがある
  • 生前頻繁に可動する部位のためトラ(シワのこと)が多い
  • 繊維が粗い
  • 面積が小さい

ショルダー

肩の革。

バランスの取れた特性を持った使い勝手の良い部位です。

特徴
  • 繊維密度が高く均一で、柔軟性と強度を持ち合わせている
  • 生前頻繁に可動する部位のためトラが多い
  • 比較的傷が少ない

ベンズ

背中から腰にかけての革。

全部位の中でも比較的採れる面積が多く強度も高いので、ベルトやバッグのストラップなど帯状のパーツを採るのに適しています。

特徴
  • 繊維密度が高く厚さもあり丈夫
  • 歪みや伸びに強い
  • 傷が少ない

ベリー

お腹周りの革。

革質はそこまで良いものではないですが、ヘッドやネックと比べて採れる面積が多いため、内装やインソールなど力のかからないパーツなどによく使われています。

特徴
  • 薄くて柔らかい
  • 繊維密度が粗く伸びやすい
  • 他の部位と比べて強度は弱い
  • 比較的安価

レッグ

脚の革。

前脚と後脚で繊維密度が少し違い、後脚の方が繊維密度が高く丈夫です。

採れる面積が小さいため小物類のパーツによく使われています。

特徴
  • 繊維密度が高く丈夫で固い
  • 面積が小さいため用途が限られる

バット

お尻の革。

ショルダー同様バランスの取れた特性を持った良質な革です。

特徴
  • 繊維密度が高く強度とコシがある
  • シワが少ない
  • 生前に牛が尻尾でよく体を叩くため小キズが多い

おまけ1:国ごとに違う部位の切り分け

上記した部位はその部位ごとに販売されているものもあれば、いろいろな部位が繋がった状態で販売されているものもあります。

また、日本と海外では革の切り分け方が違うのも特徴です。

日本の切り分け方

日本で採用されている方法は”半裁”と呼ばれるもので、1枚の丸革(裁断されていない状態の大きな革)を背中のラインで割った状態で販売されています。

牛革の全ての部位を含んでいるため、質の良い部位を使うこともできれば逆に質の悪い部位も購入することになるので、使う際は無駄が出ないようにパーツごとにしっかりと使い分けることが大切になります。

海外の切り分け方

海外では日本よりも細かく裁断して販売されており、大きく下記の3つの部位に分けられていることが多いです。

使いたい用途に応じて部位を選んで買えるのがメリットです。

ショルダー部位

ヘッド、ネック、ショルダーが繋がった状態の革。

ベリー部位

ベリーとレッグが繋がった状態の革。

ベンズ(バット)部位

ベンズとバットが繋がった状態の革。

※上記3部位は業者によっては不要な部分を切り取って販売することもあるので、どの部位がどの様に繋がって販売されているかはまちまちです

おまけ2:部位ごとに違う繊維方向

革は繊維質のため基本1方向に向かって繊維が伸びており、部位ごとに繊維の向きが違います。

ここでなんで繊維の向きの話が出てくるの?と思われるかもしれませんが、繊維方向で革の伸びや歪みやすさが変わるからです。

繊維密度が高い部位を使用し繊維の方向を見極めて裁断することとで、より強度の高い革製品を作ることができます。

牛革は種類が豊富で使いやすい素材

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色々とご紹介してきましたが単に本革製品と書かれている商品でも深く掘り下げるとそのルーツは様々あります。

自分が使っているもの、もしくは気になっている製品が、どこの原皮を使用してどの国でなめされ、どのくらいの生育年数でどの部位を使っているか、気になった方も多いのではないでしょうか。

しかし、多くの場合牛の細かいルーツまで把握している販売店は少ないですし、把握することが困難な場合が多いです。

なので、興味を持って調べてみることは大切ですが、それが分からない場合は信頼のあるメーカーやブランドなどで革製品を購入すれば基本質の良い革を選別して使っているのでそこまで気にすることはありません。

特に革好きな方は牛のルーツに思いを馳せて革製品を使ってみると違った楽しみ方ができると思いますのでぜひこの記事を参考にしてみてください。

最後までご覧頂きありがとうございました!

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