好きなことを長く続けていると、今よりもっと知識を深めたい、スキルアップしたい、など考えませんか?
知識や技術は独学やスクールでもある程度学ぶことができますが、それ以外の方法でスキルアップすることもできます。
それが皮革業界の専門資格です。
趣味でやられている方や業務にたずさわっている方も取得が必須というものではありません。
しかし、転職や独立をする際に一定の専門性、権威性、信頼性を証明することができるため大変便利です。
現役の職人から趣味のレザークラフター、または革が大好きな方に向けて
- 皮革業界の資格試験とは
- ジャンル別資格試験の種類と概要
- 就職、転職、独立時に使える資格
などについて解説します。
皮革業界に専門資格があることを知らなかったといった方も、これらの資格を取得することでそれが大きく生きる場面があるかもしれませんし、今まで以上にスキルアップすることができるのでぜひこの機会に知っていただきたいと思います。
結論として、新卒採用の場合資格取得にこだわる必要はありません。
しかし、適切な資格を持つことで転職や独立の際に有利に働くので取得をオススメします。
皮革業界の資格試験は技術者と販売者の2種類に分けられる

皮革業界に関わる資格試験は簡単にジャンル分けをすると
- 職人向けの技能試験
- 皮革製品の販売員や愛用者に向けた試験
の2種類になります。
なんとなく職人の技術を証明する技能試験があるのは想像に難しくないと思いますが、
それ以外に知識があれば素人でも受けられる試験があるところが面白い点ですよね。
以下、ジャンル別に資格試験の紹介をしていきます。
職人向け技能試験

職人向けの技能試験は基本的にものづくりの技術や知識を問われるものとなっており、プロとしての技術を証明するための資格試験となっています。
こちらは現役の職人でないと難易度が高い試験となっていますが、資格を取ることができれば製品のクオリティや信頼度が増すので現役職人の方にはぜひおすすめしたい資格になります。
革製品技能試験
公式HP:革製品技能試験 – 日本皮革産業連合会
皮革産業団体が主催する革製品制作に携わる職人のための技能試験です。
主催団体は
- 一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)
- 全日本革靴工業協同組合連合会
- 日本鞄ハンドバッグ協会
- 日本服装ベルト工業連合会
- 日本手袋工業組合
の5団体が主催となって実施しており、それぞれの分野に応じての技能試験を行っています。
昨今の高齢化などで途絶えつつある日本の技術をつなげるための後継者育成や、職人の技術や地位向上を目的に開催しています。
実施試験は以下の4つで
- 革靴製造技能試験
- 鞄・ハンドバッグ・小物技術認定(皮革部門)試験
- ベルト技術認定試験
- 手袋製造技術認定試験
となります。
革靴製造技能試験

革靴の製造技能を競う試験です。
革靴の製造技術の継承、若手革靴職人の技術向上や人材の育成などを目的にした試験で、製甲・底付の分野においての技能や知識を認定する資格になっています。
試験前に研修施設で技術向上と試験合格のための訓練を受けることもできます。
概要
公式HP参照:革靴製造技能試験について
等級区分 | 1級(実技90点以上、学科70点以上) 2級(実技60点以上、学科60点以上) ※特級の区分はなくなりました |
受験資格 | 製甲、底付けの作業経験が半年以上 作業用工具の使用、機械の操作が安全に行える |
受験料 | ¥12,000 |
特典 | 合格証書 |
鞄・ハンドバッグ・小物技術認定(皮革部門)試験

鞄・ハンドバッグ・小物(紳士・婦人)の3分野において職人の技術や知識を認定する試験です。
日本伝統の皮革技術における社会評価の向上や職人の技能と社会的・経済的地位向上を図るとともに、後継者育成を目的としています。
受験者は3つの部門の内1つを選び、学科試験、実技試験を行い両試験に合格した方のみ認定されます。
また、小物部門のみ紳士と婦人で分かれているのも特徴です。
等級別概要
公式HP参照:鞄・ハンドバッグ・小物技術認定(皮革部門)試験
等級区分 | 1級(上級技術者が通常有すべき技能の程度) |
受験資格 | 日本国内での鞄・ハンドバッグ・小物の製造実務経験が10年以上(2級合格者は実務年数に問わず次年度受験可能) |
受験料 | 実技試験 ¥20,000 学科試験 ¥2,000 |
特典 | 合格証書 |
等級区分 | 2級(中級技術者が通常有すべき技能の程度) |
受験資格 | 日本国内での鞄・ハンドバッグ・小物の製造実務経験が5年以上(3級合格者は実務年数に問わず次年度受験可能) |
受験料 | 実技試験 ¥13,000 学科試験 ¥2,000 |
特典 | 合格証書 |
等級区分 | 3級(初級技術者が通常有すべき技能の程度) |
受験資格 | 日本国内の鞄・ハンドバッグ・小物の関連企業にて就業実績1年以上(業務内容問わず)、専門学校卒業見込みのもの、鞄・ハンドバッグ・小物の製造意欲のあるもの |
受験料 | 実技試験 ¥3,000 学科試験 ¥2,000 |
特典 | 合格証書 |
※日本鞄ハンドバッグ協会の参加団体会員の企業受験者は各等級の受験料が割安になります
ベルト技術認定試験

後継の人材をより多く育成することを目的とした試験です。
概要
公式HP参照:ベルト技術認定試験について
等級 | 中級(日本服装ベルト工業連合会員が認めた中級程度に値する技能) 初級(日本服装ベルト工業連合会員が認めた初級程度に値する技能) |
受験資格 | 日本国内で過去、現在問わず製造経験があるもので、日本服装ベルト工業連合会が申し込み段階で適正と判断したもの |
受験料 | 要問合せ |
特典 | 合格証書 |
手袋製造技能認定試験

手袋職人の技術や知識を一定以上の基準によって認定する試験です。
伝統ある手袋製造に対する消費者の評価を高め、職人の技術や知識、また社会的・経済的地位の向上や、後継者育成を目的としています。
概要
公式HP参照:手袋製造技能認定試験について
等級 | 1級 2級 3級 |
受験資格 | 日本国内で過去、現在問わず製造経験があるもので、日本手袋工業組合が申し込み段階で適正と判断したもの |
受験料 | 要問合せ |
特典 | 合格証書 |
日本生活環境支援協会(JLESA)
公式HP:日本生活環境支援協会
日本生活環境支援協会は、生活における技術スキルの水準が一定以上であることを認定するものです。
各スキルの技術者としての水準を示すことで技術向上や、企業や現場が人員採用を行う際の客観的な評価尺度を提供し、社会的地位の確立や人材育成を目的としています。
こちらで行われている認定試験は幅広く
- 手芸・工作関連資格(7種)
- 料理・美容食関連資格(7種)
- ペット・動物関連資格(8種)
- 住まい・植物関連資格(8種)
- 美容・健康関連資格(8種)
- 趣味関連資格(10種)
の6ジャンルとなっており、多くの試験を行っています。
その中でレザークラフトに関係する資格が下記の資格です。
手芸アドバイザー認定試験

クラフト全般(手芸やレザークラフトなど)に関する様々な知識や技術を理解していることを認定する資格です。
ハンドメイドを始めたい方やクラフト関係の講師活動をしたい方などにおすすめの資格です。
当協会が資格取得後に提示する目指せる職業の例として
- 手芸アドバイザー
- クラフトハンドメイドマスター
- 雑貨店
- 手芸講師
を挙げています。
概要
公式HP参照:手芸アドバイザー認定試験、合格者専用ページ
等級 | なし |
受験資格 | なし |
受験料 | ¥10,000 |
特典(有料) | 合格認定証/合格認定カードの発行(各¥5,500) |
皮革製品販売員、愛用者向けの資格試験

皮革関連の資格試験の中には皮革製品の販売員や愛用者が受けられる資格試験もあります。
それらは販売の仕事や愛用者が皮革製品を扱う際の知識として役立つほか、皮革関連の仕事を自分で始めようとしている方などにも専門性、権威性、信頼性を証明できる資格となっています。
また、素人でも受けられるといった点でも受験ハードルが低く資格勉強を始めやすくなっています。
レザーソムリエ
公式HP:レザーソムリエ|トップページ

レザーソムリエは、革製品の知識を深め長く楽しんで使いたい、という気持ちを持った方たちの思いに応えるために、皮革業界が始めた取り組みの1つです。
皮革製品について一定の知識を持つ方をレザーソムリエとして育成することで、革の持つ魅力を理解して愛着を持って革製品を利用したり、多くの方々に天然皮革の良さを知ってもらうことを目的としています。
実地主体は一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)が主体となり、日本革類卸売事業協同組合(JLTA)を通し株式会社矢野経済研究所(YRI)が運営しています。
合格者には合格証書類や証明バッジの授与のほか、工場見学への招待など特典が豊富なことが他の資格試験にはない特徴です。
等級別の講座も定期的に開催しており、資格試験の対策としてはもちろん知識を深めたい方にも勉強になる内容になっています。
初級、中級の2等級があり、どちらも年1回の開催になります。
資格を生かせる職業の例として
- 皮革製品販売員
- 皮革製品バイヤー
- 皮革製品コンシェルジュ
などがあります。
レザーソムリエBasic(初級)資格試験
初心者を対象とした資格になります。
皮革素材の特徴や違いに始まり、クツやカバン、ベルト、レザーウェアなどに関する基礎知識やケア・お手入れなど、革に関する基礎知識を網羅的に問う資格試験です。
等級 | 初級 |
受験資格 | なし(日本国内に連絡可能な住所があること) |
受験料 | ¥7,700 |
特典 | 認定証(カード) 認定証書(賞状形式) レザーソムリエ認定バッジ |
レザーソムリエProfessional(中級)資格試験
初級者からさらに専門的な知識や技能を測り、それを証明する資格です。
ワシントン条約やSDGsなど法律や国際指標に対する理解が必要になります。
等級 | 中級 |
受験資格 | レザーソムリエBasic合格者 皮革ないし革製品取り扱い歴(販売業含む)が5年以上 (日本国内に連絡可能な住所があること) |
受験料 | ¥11,000 |
特典 | 認定証(カード) 認定証書(賞状形式) レザーソムリエ認定バッジ |
日本皮革製品メンテナンス協会
公式HP:一般社団法人日本皮革製品メンテナンス協会
一般社団法人日本皮革製品メンテナンス協会(JLPMA)は天然皮革製品のケアを通じてその素晴らしさを伝えることを目的として2018年に設立された団体です。
主な事業として
- 靴磨き職人、靴修理職人育成のためのセミナーの実施
- 皮革製品のメンテナンスを啓蒙するためのセミナーやイベントの開催
- 皮革製品のメンテナンスに関する情報提供とネットワーキングのための会員組織の運営
- その他目的と趣旨を達成するために必要な事業
などを行っており、その一環として
靴磨き職人、靴修理職人、皮革製品製造業および販売員に向けた検定制度の運営も行っています。
サービスやイベントの参加にはメンテナンス協会に入会することが必要で、それにより資格試験のほか勉強会やビジネスマッチングなど様々な特典を受けることができます。
(※会員は個人会員、法人会員、賛助会員の3種類があり、それぞれ入会費、年会費がかかります。
公式HP参照:日本皮革製品メンテナンス協会入会のご案内)
実施している資格試験は下記の2種類です。
シューケアマイスター

革靴のお手入れや靴磨きなど、シューケアの高い知識と技術を有した方を認定する制度です。
販売者向けでありながら技術的な面も必要になる試験になります。
資格を生かせる職業の例として
- 皮革製品販売員
- シューシャイナー(靴磨き職人)
- シューリペア職人
などがあり、社内検定資格制度として採用している企業もあるようです。
概要
公式HP参照:資格検定制度
等級 | なし |
受験資格 | 日本皮革製品メンテナンス協会会員の方 |
受験料 | ¥11,000 ※3年に一度更新のための講習受講が必須(¥3,300) |
特典 | マイスターバッジ 認定証 |
レザーケアマイスター

バッグ、財布、ベルトなど革小物全般の販売やお手入れに関する技術と知識を持った方を認定する制度です。
販売者向けでありながら技術的な面も必要になる試験になります。
資格を生かせる職業の例として
- 皮革製品販売員
- 皮革製品バイヤー
などがあり、社内検定資格制度として採用している企業もあるようです。
概要
公式HP参照:資格検定制度
等級 | なし |
受験資格 | 日本皮革製品メンテナンス協会会員の方 |
受験料 | ¥11,000 ※3年に一度更新のための講習受講が必須(¥3,300) |
特典 | マイスターバッジ 認定証 |
就職・転職・独立時に使える資格
皮革産業に関わる資格試験をご紹介しましたが、調べると意外と多く存在することが分かります。
そこで気になるのは転職、就職、独立時などに使える資格があるかどうかだと思います。
基本的にはどの資格も有利に働く!しかし必ず取るべきものではない

改めて結論を書くと
目指す分野に合わせて資格を取れば基本的にどの資格も有利になります。
技能系の資格の場合は職人として就職、転職するのに有利に働き
知識系の資格の場合は販売やアドバイザーなどの職に活かすことができます。
なので自分が必要だと思った資格は取っておくことをオススメします。
しかし、これらの資格は必ずしも就職や転職に必要な資格ではありません。
当然企業からすると判断材料の一つにはなりますが、人材採用の基準は資格の有無よりも企業が求める人材かどうかが重要なポイントになります。
資格がない場合でもキャリアや実績で十分戦えることは大いにあります。
特に新卒採用の場合は資格取得よりも業界や業務に対する熱意や基礎的なコミュニケーション能力のほうが重要視されます。
そして資格を取るにあたっての勉強期間や受験料の発生などデメリットを考えると、資格を取ることにそこまで執着することはないと思います。
独立後の専門性、権威性、信頼性の証明に資格は有利に働く

ただ、これらの資格が絶対に有利に働く場合があります。
それが独立した時です!
会社員から独立後は基本的に会社の後ろ盾もなくなり、専門性、権威性、信頼性が無い状態となっています。
会社員時代に副業などで顧客を得ている場合以外、その状態から顧客を作っていくのはとても難しく時間がかかる作業です。
しかし、資格があることで自身の技術や知識をわかりやすく第三者に保証することができます。
その点で資格取得は個人事業主にとって大きい武器になります。
メリットとデメリットを天秤にかけて必要な資格を取ろう!
必要な資格を取ることに大きいデメリットは存在しません。
ですが、会社勤めの方やレザークラフトを趣味でやられている方の場合
資格がメリットに働く機会がなく、勉強に当てた時間や受験費用などが無駄になる場合もあります。
資格をとったときのメリットデメリットをしっかりと天秤にかけ、有意義な選択を選びたいですね。
この記事が少しでも皆さんの生活向上につながれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
